今年は一月末から二月にかけてコロナウイルス第六波の流行となったため、受験生のいる家はどこのご家庭も対応に苦慮されたことと思います。我が家もそうでした。しかも我が家の場合はなんと家族から陽性を出してしまい、合否以前の、入試を受験できるか否かの瀬戸際まで追い詰められました。この体験が何かの参考になれば、と思い一筆したためようと思います。

 家族で陽性者が出たのは、ちょうど一校目の受験校から合格をいただき、これから第一、第二志望校の受験に向けて盛り上がっていこう、という時でした。予兆はあったのです。受験生の次男の通う小学校でも学級閉鎖がちょこちょこ始まりました。塾の友達も感染予防のため小学校をお休みして塾の自習室に通い詰めている、という話も聞いていました。さすがに受験生本人は感染予防のため小学校を休ませよう、と決めましたが、さて他の兄弟はどうしようか、と名進研の先生と相談していたくらいです(その時は公立中学校に通う兄は学年末試験の直前だったので通学させ、他の小学生と幼稚園の弟妹は自宅待機させよう、と話したりしていました)。

 その翌日です、幼稚園を休ませた妹が急に熱を出したのは。病院に行き、ただの風邪だろうとの診断をもらったのですが、「受験生が家にいるので念のため」と検査をしてもらったところ、まさかの陽性反応。通っている幼稚園ではまだ流行しておらず受験生の家族として「人混みに行かない」「手洗いうがいはマメに」などと、それなりに感染予防はとっていたつもりだったのに、感染。晴天の霹靂でした。お医者様から「この時期はどこも流行していて、受験校は何らかの対策をとっているから、早めに電話した方がいいよ」というアドバイスをもらい、相談してみたところ、第二志望校は日程的に自宅待機期間から外れ、第一志望校も、無症状の濃厚接触者の場合(PCR検査結果が陰性で無くても)、別室受験可能ということがわかりました。家庭内感染を防げれば何とか受験だけはできそうです。かくて自宅待機から即受験、というハードな日程が始まりました。

 十日間の自宅待機で気を使ったのは、家庭内感染の予防と本人の精神面の安定でした。感染予防は、受験生は病人とも他の家族とも別の部屋で(食事も含めて)生活することと、自宅内でのマスク着用、共用のトイレ・洗面台の消毒、換気の徹底といった基本的なことしかできませんでした。特に別室でこもっきりの生活はつらく、本人は「まるで座敷牢のようだ」と言っていましたが、結果的に何とかなったようでよかったです。

 本人の精神面の安定については、毎日決まった時間に元気な家族で運動させました。24時間×10日間も途切れなく自宅にいるので、のんべんだらり過ごしていたら、あっという間に一日が過ぎてしまいます。そこで生活にメリハリをつけるために毎日午前中、元気な子は全員そろって運動することにしたのです。大したことはできませんが、皆で揃って小一時間、体を動かすと少しはストレス発散にもなったようで、受験生も他の兄弟もその前後一時間くらいは、集中して勉強に取り組めました。ただし、それ以外の時間は結局、それ程勉強できませんでした。計算と漢字は今までの習慣で何とか毎日続けていたようですが、それ以外の勉強時間となると、ずっと減りました。親としてはこの大切な直前期にこんなに勉強しなくて良いのだろうか、と不安になります。本人も勉強しなくてはいけない、と重々わかっているものの、他の兄弟がゲームしたり遊んだりの中で、一人だけ勉強する気にもなれなくて、というジレンマでつらそうでした。しかも自宅待機中で名進研の授業にも自習室にも行くことができず、他の子の様子も気になり、不安そうでした。

 ただクヨクヨしても仕方ないので、次の二つだけは約束させました。

 一つは名進研の先生から自宅待機決定後にもらったプリントだけは、受験日までに終わらせること(急なことながら準備して下さってありがとうございました)。

 もう一つは一日に四教科を少しずつでも一回は必ず勉強すること。本番の入試では四教科を半日でやるので、その練習になるからです。これだけはお願いして、後は本人のペースに任せました。

 そして迎えた第一志望校の受験当日。送迎も予定と違って夫が付き添うことになりましたが、幸い受験校の下見は家族で行っていたので、交代してもトラブルなく送迎できました(夫はまさか自分が付き添うとは思っていなかったので、あんまり真面目に見ていなかったと不安そうでしたが)。雪の降る中出発して、ニコニコ顔で帰って来た時はホッとしました。本人曰く「お父さんの送迎は日曜講座の時みたいだったから、リラックスして行けたよ」とのこと。日頃から夫に受験準備を協力してもらっていて、本当に良かったです。

 結果は残念ながら不合格でしたが、翌日受けた第二志望校は見事合格を勝ち取ることができました。受験直前期は全く勉強できなかったけれど、それまでの積み重ね、特に冬期講習と正月特訓で頑張って勉強した成果が出たのでしょうか。事前にこつこつ準備しておくことの大切さを親も子も実感しました。

 名進研の先生方にも五年の頃から、じっと親身に指導していただきありがとうございました。お蔭様でこうして笑顔で受験を終えることができてほっとしています。どうもありがとうございました。