小学三年生の二月、4つ上の兄と同じように、娘は名進研の門を叩いた。

 親としては2回目の中学受験であり、私の母校を志望する兄のときよりは、気持ち的にはだいぶ楽に臨めると思っていた。しかし、甘い予測は、徐々に増えていく苦痛、緊張感に置き変わっていく。

 見えない敵、新型コロナウイルスとの戦いも大きかった。致死率が高かった前半はもちろん、風邪化してきた後半戦でも、必要以上に気を遣った。家族間で感染が横行すると、最大で1ヶ月程度、通塾できなくなる。授業動画は見られると言っても、モチベーションの維持は困難であったであろう。また、プレ中学入試を受験できなくなることも懸念であった。席が後ろに行くだけならまだしも、下のクラスに落ちることは、プライドの高い娘が受け入れられたであろうか。実際に、兄が濃厚接触者となり、受験が危うかったプレ中もあったが、ギリギリ受験できることが判明した時は、親子で涙したのを今でも覚えている。

 娘は成績は優秀で、周りからは、いわゆる「絶対受かる子」と思われていたのであろう。

 ただ、そんなことを自慢したいわけではなく、その地位を守るには、親子ともに並々ならない努力が必要であったことを伝えたい。勉強面、生活面ともに、世間から「そこまでやるか」と思われるほどのことを娘にはやらせたし、親自身も取り組んだ。私の意見としては、上位の家庭ほど、「そこまでやるか」のレベルが高いのだと思う。「そこまでやるか」のごく一部は合格のお礼時に所属校にお渡ししたが、全部詳細はとてもこの原稿内では収まらず、本が一冊書けるくらいであり、中学受験コンサルタントを名乗ろうかと自負しているくらいでもある(笑)。東海、滝、南山女子を本気で目指すご家庭に、とにかく、申し送りたいことは、「そこまでやるか」をやらないと受からない学校であるということ。そして、そこまで頑張って行く価値の学校であるということ。

 中途半端な気持ちで臨んで、残念な結果を得るならば、それは子供が傷つくだけである。

 本気で覚悟を決めて、親子で臨んでいただきたい。

 何度も何度も衝突し、もがいて、崩れて、少しだけ立ち直り、壊れて、それでもめげずに……。

 こうして築いた親子の絆は、合格の暁に鋼の様に強固なものになっているであろう。

 最後に、名進研との関わり方について。

 この塾はオーダーを出せば出すほど、話し合えば合うほど、円熟味の出る塾であると思う。

 些細なことでも密に連絡を取り、情報共有することをお勧めしたい。

 個性豊かで人情味あふれる、所属校の先生方には感謝の気持ちしかない。

 この体験記に恨み辛みを書いてやろうかと思うくらい衝突したこともあったが、全てが終わった今は心から言える。本当にありがとうございました。