「無理、勉強できない、何も考えられない‼」
 六年生の十月、これまで一生懸命勉強していた息子が壊れだしました。

 思い返せば、五年生の十二月までスポ少と塾との両立。テストゼミで土曜は練習に参加できない分、バッテングでチームの役に立ちたいと、毎日欠かさず素振りなどの自主練をし、マメだらけになった手の痛みを我慢しながら鉛筆を握り勉強する息子。やりすぎと練習を止めようとしても「やるからには両方、全力でやりたい」、そういう息子の想いを応援したくてサポートをしてきました。

 しかし、両方を全力で取り組むには、時間と体力が足りず、やがてストレスとなり、息子の頭には円形脱毛、さすがに限界。スポ少をあきらめることにしました。
 受験に専念するようになってからは、持ち前の頑張りで成績もあがりTN1へ、六年生からは俊秀をキープするようになりました。夏期講習もやる気満々、毎日自習室で最後まで勉強し頑張っていました。
 志望校も決め、本格的に受験態勢に入るのかなと思っていた時、息子の中で何かが壊れ始めました。

 「勉強しないといけないのはわかっているけど何にも考えられない、志望校は合格したいのに、どうしよう、イライラする、勉強やめたい‼だけど母さん、ここまで頑張ってきたんだからやめられないじゃないか‼」大暴れする息子に、私は、「なぜ今なの??」何とかしなければと焦ればあせるほど冷静さをなくし息子と衝突する始末。
 完全にやる気をなくし、机に向かっても、机と体の角度は広がるばかり、塾もただ通っているだけで意味ないと、わざとゆっくり仕度。塾まで送り、車から降りたと思ったら、逃走し私も泣きながら必死に追いかけるということもありました。テストもやる気がなく休んだり、納得いかない点数の時は問題用紙を破り散らし暴れる。こんな状態が続いたため、受験やめようと何度か話し合いましたが、息子に迷い苦しんでいる様子があったため、やめさせることもできない状態でした。

 そのような状態がずっと続き、十一月くらいだったでしょうか、息子が突然「ほんとはゲームがしたかったんだ」と言い、泣き出しました。これまで、受験のためと自らの決断でゲームを断ち、私が言わなくても自分でスポ少もゲームもやめた行動に“この子は大丈夫だ”と過信し、やりたいことをやめると決断した息子の気持ちを考えたことがなかったことに気づきました。十二歳ではじめての受験、志望校合格=勉強以外は我慢という考えを、私の“頑張れ”という言葉に応え続けるうちに、植え付けていたのかもしれません。

 そこからは、先生のアドバイスもあり塾でしっかり勉強し家ではゲームなど気分転換の時間をつくり、十時には寝るという生活を始め、時々暴れることはありましたが、勉強する気力が戻ってきました。成績は大きく下がることもなくそのまま入試の時期へ突入。合格もいただきこの勢いで、第一志望校合格いけるかなと思っていました。しかし、第一志望校の入試が近づくにつれ、またも息子に異変が…
 「母さん、お腹(胃)が痛い」「頭が痛い」と訴えることが多くなり、更に、「プレ中学入試は全く緊張しないけど、第一志望校入試は絶対緊張する」と負の自己暗示をかけはじめ、何とか暗示をとこうとしてみるもののとくことはできず、入試当日暗示はかかった状態で、緊張状態‼話しかけても聞こえていない。更に試験中は何度も胃痛に襲われ頭の中も真っ白だったようです。試験の終わった息子から「問題が全く頭に入ってこなかった」と落ち込み、今にも泣きそうな表情。家に帰ってから、問題の解きなおしはしないよう言ったものの、こっそり解きなおし「あーーーなんでこんな問題が解けなかったんだーあと五十点はとれていた。」やっちゃったのね、後悔しか残らないのに…。そして、結果は一点足らず不合格。その後は大変でしたが何とか気持ちを切り替え、第二志望校にご縁をいただきました。

 中学受験、息子と振り返り、苦しいことだらけでしたが、息子は「第一志望校落ちたのが一番つらかった。勉強しないといけないのはわかっていてもできなくてやめたかったのも本当だったけど、今は中学受験でいいこともあったし後悔はないよ」と言っています。
 この苦しかった受験を最後までやめずに成し遂げた事こそ、この先息子の力となり、中学からの六年間をどう切り開いてくれるか。失敗から、気づき学んだことを力に変え進んでいこうね。