若芽を摘んでしまわぬように
息子は名進研が大好きでした。体は小さくとも快活で元気いっぱいの彼は、学校も好きでしたが、名進研でも頼もしい先生方や素晴らしい友人たちに囲まれて、有意義に過ごすことが出来ました。
名進研には三年生からお世話になりました。この四年間、親は特に何もしていませんが、夫婦で役割分担をして息子に合ったサポートが出来たのではないかと思っています。私はただお弁当作りと送迎と話し相手に徹していました。受験勉強に関してはノートも教科書も見たこともないくらい無頓着でした。従って、勉強しろとは一度も言いませんでした(というか言えませんでした)。
声掛けは「宿題終わった?」「そろそろ寝よっか」が決まり文句でした。ご家庭によってサポートの仕方は千差万別、お子さんのタイプも叱咤激励で伸びる子、褒めまくりでやる気を出す子など様々だと思います。息子の場合はマイペースで外野からいろいろ言われるとかえってやる気を失うだろうと察して、受験勉強については宿題さえしっかりやっているようならそれで良いと思い、口出ししませんでした。受験勉強中の反省点としては、私のせいで休憩を長引かせてしまったことが何度かあったことです。子供だから集中力にも限度があり休憩は重要と認識していましたが、私も息子も話好きで塾や学校や友達のこと、他愛も無いことなど話し出すと止まらず、それでよく休憩が長くなってしまいました。良い息抜きになっていたのなら救いですが…。息抜きといえば、息子はよくトイレや入浴中に大声で長々と歌ったり、塾から帰宅後に車から降りるや否やリュックを置いて走り出し近所をランニングするなんてこともやっていました(笑)。集中して勉強した後はとにかく体を動かしたくて仕方がなかったようです。うちにはゲーム機がありませんが、無くても平気だったのはそういう訳かもしれません。以上のように私が勉強に無頓着で一緒になって遊んでしまうような母親であったのに対し、父親は深夜仕事から帰宅後に教科書等をそっと見て、息子が今何を学んでいるのか何が苦手なのかをきちんと把握していたようで、翌朝の食卓で息子と話題にしていました(教えることはしませんでした)。また、六年生のプレ中学入試の引率や保護者会の参加、受験本番の引率は父親がやってくれました。そういった意味では夫婦でしっかり役割分担出来ていたかなと思います。子供が本来持っている自ら伸びる力=若い芽を親が摘んでしまわぬよう温かく見守ってあげよう、というのが夫婦の一致した考えでした。
(三年生・四年生)
中学受験は親が漠然と考えていた程度で、嫌そうだったりしんどそうだったりしたら、受験は無理強いせず公立に行かせるつもりでした。まず、三年生は塾というものに慣れるための一年と捉えていました。週に一度でしたし、校舎が自宅から近く自転車で気軽に行けることもあり、すぐに慣れましたが、クラスに男の子は一人だけだったので、「四年生になったら男の子いっぱい入ってほしいなあ」とよく言っていました。受験のことは三年生ではまだわからないと思い息子には特に話しませんでしたし、本人も理由もわからないまま楽しいと通っていました。四年生になり、念願の男子入塾生がどっと増えて、息子は以前にも増して喜んで通塾しました。ただ、それまで週一回だった授業が平日週二回に増えたので当初はリズムをつかむのがしんどかったようです。体を動かすのが大好きな息子は、少しでも学校の友達と遊びたい、だから塾の宿題を夜のうちに済ませたい、翌日に持ち越したくない、でも塾から一旦帰宅するとのんびりしたくなるから宿題は塾で済ませたほうがいい、だからお母さんお弁当作って‼ という結論に至り、四月終わりから塾のある日はお弁当を持っていって自習室で宿題を済ませてくるようになりました。おかげで毎日放課後に友達と遊べて満足だったようです。結局、以降六年生最後の日まで、塾のある日はお弁当持っていき自習室を利用しました。息子のように塾から一旦帰宅すると腰が重たくなってしまう子には自習室は向いているかと思います。中学受験については、彼にわかりやすく言葉を選んで説明してみましたが、まだよく飲み込めないようで、「歩いて行ける学校ならどこでもいいよ」と言う始末。
また、名進研を辞めたくないから受験するという雰囲気が漂っていたので、これは本末転倒、来年こそはしっかり話し合わなければと強く思いました。
(五年生)
我が家にとって大きな意味を持つ年でした。相変わらず学校楽しい、名進研楽しい、トップレベル講座EX面白い‼と笑顔で過ごす日々。成績も国語以外はそこそこ安定しており特に算数は大好きで自信を持っていました。受験の意義については塾でも話題になるからか理解はしたようです。しかし、「みんなが受けるから僕も東海」という状態。自発的な気概はありません。結局、冬期講習も終わった頃、きちんと向き合い話をしました。本当に行きたい学校がないのなら受験の必要はないのだから。受けて合格したとしても、自身が本当に目指しているわけではないのなら、入学したあとに何かいやなことがあった時など「俺は行きたかったわけじゃないのに。親が受けろと言ったからだ。親のせいだ」と、考えるようになってしまうかもしれない。まだ五年生とはいえ、行きたいか行きたくないかしっかり自分で決めさせるべきだ、何かあるとすぐに他のせいにするような人間にはなってほしくない、自分でしっかり考えて決めることが出来る人間になってほしい、と思っていましたので、息子にも伝えました。「みんなが受けるから、ではなく本当に自分が東海を目指したいのなら応援するよ。公立に行きたいならそれでもいいし、行きたいと思う私立があるのならそれがどこでも応援するから。塾をやめたくないから受験するというのは逆の考え。お母さんたちは受験を絶対に無理強いしないし自分で決めるべきことだからよく考えてね」と。すると息子は深く頷き、数日後、「お母さん、僕東海に行きたい。みんなが受けるからじゃなくて、六年間東海に通って勉強とか部活したい。絶対合格したいって思う‼」と言ってきました。その五年生の冬期講習明けが、息子の本当の意味での受験生活の始まりでした。
(六年生)
トップレベル講座EXも含めると週に六日の塾通いで、日曜日などテストゼミ、志望校別講座、トップレベル講座EXと朝から夕方遅くまで大変だったと思いますが、本人は相変わらずのマイペースでした。学校のクラス担任が宿題を多く出す先生に当たり、それをこなさなきゃいけない、また、友達と遊ぶ時間がなくなったのも残念そうでしたが、気持ちはいつしか切り替わっていったようです。夏期講習や正月特訓教室などきついと言われるものも、始まる前には「ワクワクする〜」と言い、終わったときの感想は「普通だったよ」でした。(ただ夏期講習については、毎日小さな体に重たい荷物を背負ってターミナル校に通っていたので腰が痛いと言い出し、しばらくは毎晩寝る前にマッサージしてあげたり湿布を貼ったりしました)。息子だけでなく私も相変わらずのペースで、どの単元を勉強しているのか把握してない無頓着ぶりでおかしな母親だったかもしれません。受験が近づいてくると親はそわそわするものだと言われますが、私自身は習い事や小学校のPTA活動などで慌しくしていたからかそんなに意識せずに過ごしていました。ただ、そんな私も十二月に入るとさすがに体調管理には神経を遣いました。インフルエンザ予防もですが、元気有り余るお調子者の彼のこと、学校で骨折など怪我をしてこないか、こればかり気をつけるよう言い聞かせるしかないので心配でした(笑)。この頃だったと思いますが、息子にふと「お母さん、いつもおいしいお弁当を作ってくれてありがとね」と言われて驚いたのを覚えています。
正月特訓教室も、ボーイスカウトで何度も親元離れて寝泊りしてるから平気だと言いながら「楽しみ〜」と笑顔で出掛けていき、それ以降特訓でもらったトレーナーや鉢巻を四六時中着たがって、気合い入れも喜んでやっていました(笑)。そしていよいよ受験直前期。年が明けてすぐの週に函館ラ・サールの入試があり、最初ということで本人は結構緊張したようですが、合格出来て幸先よいスタートが切れました。息子は学校を休みたくないと登校していましたが、第一志望の東海受験の直前の週にクラスでインフルエンザ感染が拡がっていたため急遽三日前から休ませました。無理は禁物です。
東海受験から帰宅した息子にどうだったと聞くと、いつもとは違った様子で、「出来たか出来なかったのかわかんない」しか言いません。得意な算数はどうだったのか、大の苦手の国語はどうだったのか気になってしまい、いつも楽観的な私もさすがにペシミストになり、合格発表の日まで胸が張り裂けそうでした。ですから合格通知を受け取った時には独り号泣しました。それまで長い道のりを思うと、やり続けた、それだけでも大きく成長したなと感無量でした。帰宅して合格通知を見た息子が、「実は東海の入試、自信あったんだ。でもお母さんに期待させておいてもし不合格だったら格好悪いから内緒にしてた」と言ったので、私の不安が杞憂とわかり泣き笑いしてしまいました。息子には、「ホントにおめでとう。誇りに思うよ。本当はこれからが大変。山あり谷あり。でも、自分で行きたいと目指した学校なんだから、辛いことがあっても乗り越えていけるよ‼」と伝えました。
これを読んでくださっている皆様、どうかお子さんたちの努力を信じ、是非息抜きのときなど一緒に楽しく話をしたりしてリラックスさせてあげてください。こんな私が言うのもおこがましいですが、子供たちは難しい問題を沢山こなしているだけでも立派だと思います。「ホントすごいよね、こんなに難しいのをやってるんだもんね」と褒めてあげてください。どうか皆様ご家族にも桜が咲きますよう心よりお祈りしております。
最後になりましたが、名進研の先生方には本当にお世話になりました。丸投げで申し訳ありませんでしたが、お蔭様で函館ラ・サール中学校、名古屋中学校、東海中学校、滝中学校と合格することが出来ました。最後の入試直前の日まで熱くご指導してくださった先生方、本当にありがとうございました。また、異動までお世話になった先生、トップレベル講座EXやテストゼミでお世話になったターミナル校の諸先生方にも心より感謝申し上げます。先生方の今後益々のご活躍をお祈りしております。名進研は最高でした‼












