小三の夏から小六の夏までを海外で過ごした息子。小学校の転校も多く、中高は同じ環境で同じ友達と過ごさせてあげたいという両親の意向で中学受験をすることになりました。

 小四の二月から大手海外提携塾に通うも、通塾回数は少なく、宿題はやらない、友達と遊ぶ日々、勉強イヤ、塾やめたい、「日本に帰ったらテレビもゲームもやめて勉強するから。」の繰り返し。小六の夏に帰国、いくつか塾を検討しました。先生と子供、保護者とも距離の近い名進研に私が好印象で、体験授業が楽しかったと息子が名進研を選びました。何とか入会テストをパスして、大型校での夏期講習が名進研デビューでした。それまで長時間勉強をしたことのない息子にとって、夏期講習はまさに苦行のような日々でしたが、初日に算数のH先生がご自身の頭皮と等比数列をかけて面白い授業をしてくださったり、国語のI先生も毎日大きな体のすべらないエピソードを話してくださり、辛い勉強も楽しいと思えていたようでした。そして夏期講習総仕上げテスト、息子は所属校舎で1位の成績をとりました。次のプレ中学入試も、その次も……。意外にも1位がとれてしまったことで、家に帰ってきてもダラダラしながらテレビにゲーム、やっと勉強するかと思ったら「塾で集中して疲れているんだ。」と早々に寝てしまい、宿題をやらない。何とか塾に行くまでの時間や夜、休みの日に宿題をやるよう促し、やらせてはいましたが、宿題が完璧に終わった週は一度もありませんでした。分からない問題があっても捨て問だと解説は読まない、面倒だからと質問にも行かない。室長に相談すると、「確かに授業には集中しています。彼に必要なのは必死さだけです。」と。

 そして十二月中旬、息子を変える事件が起きます。十一月から日曜志望校特訓をやめたがっていた息子。その理由はいくつもあり、時間が長いこと、日曜日に早起きして大型校まで行くのが嫌なこと、毎週終わらない宿題も日曜日が休みになればできる、ということでした。「ずっとやめたいって言っているのに、やめさせてくれないのはお母さんじゃん。もう来週から行かない、やめる。」と息子。どう言い聞かせても聞かないので室長に電話しました。「面談しましょう。絶対に怒らないので連れて来てください。」と室長。だけど息子は「絶対怒るから行かない。N先生とお母さん、二人がかりでつめるから嫌。」と言って聞きません。平謝りの私に室長はこう言いました。「本当に怒るつもりはなかったのですけどね。ただ受験をどう考えてる?と聞きたかっただけです。JSクラス1位の席に座っている子が毎週宿題ができないというのはどうかと思いまして。皆必死で宿題をやっています。」と。さらに受験初戦校に選んだ函館ラ・サール中学校への受験理由が、名前がかっこいいから、というのも室長には引っかかっており、それも含め、受験をどう考えてるのか聞きたかったそうです。

 その後、室長との電話の内容を伝えたところ、息子は黙って何か考えている様子でした。それから数日後、受験初戦校を函館ラ・サールから、西大和学園の東海受験に変更したいと言い出しました。息子の中で何かが変わったようでした。西大和学園に向けた対策を始めました。それまではお風呂上がりにゲームをしていた息子が、お風呂上がりにも西大和学園の過去問に取り組むようになりました。真剣に解説を読むようになりました。求めていた必死な姿でした。しかし結果は不合格。落ち込む息子。初戦校不合格、受験校選択が間違っていたのかもと私は後悔しましたが、息子はすぐに吹っ切れて、翌週行われる西大和学園の本校受験にリベンジしたいと言いました。もし合格しても進学するつもりはない学校に、こんなに必死になっている息子に私は驚きました。しかし西大和学園本校受験も結果は不合格。同じ学校からの2回目の不合格通知、また落ち込んでしまうかと、室長も私も息子のメンタルを心配しましたが、息子から返ってきたのは意外な言葉でした。「悔しい。努力が足りなかった。こうなったら残りの3校(名古屋、東海、滝)すべて合格しないと気が済まない。」その後も勉強への必死な姿勢は変わりませんでした。

 息子は宣言通り、名古屋スカラー、東海、滝に合格することができました。東海の受験会場から出てきた息子は晴れやかな表情でこう言いました。「今年は簡単だったのかもしれないけど、問題が簡単に感じた。西大和学園が難しかったからかな。西大和学園受けて本当によかった。」二度の不合格通知をもらい、挫折を味わった西大和学園に対して、そんな前向きな言葉を聞けたことが私は嬉しかった。息子の成長を感じ、中学受験をしてよかったと心から思えた瞬間でした。愛知県の学校だけを受験してすべて合格していたら、きっと息子は天狗になっていたと思います。誰も勧めていないのに、自分から西大和学園を受験したいと言って挑戦して、不合格だった悔しさがより息子を成長させてくれました。今、プレ中などで東海、南山女子、滝に偏差値が届いている後輩の方には、どんどん県外へ飛び出して、より上の学校に挑戦してほしいです。上には上がいます。

 名進研でお世話になった先生方、本当にありがとうございました。長文を最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。