第一志望校の合格通知を手にして、ホッと肩の荷を下ろした気持ちでこの体験記を書いております。十二歳の子供が自分から目指す目標に向かって一生懸命努力していく姿、そして目標が実際に叶い、心から喜ぶ姿を見るのは少々大げさな表現ですが親としては言葉にならないような魂の震えるような喜ばしい瞬間であり、ここ数年で受験勉強を通じて精神的に強くたくましく成長した娘の姿を我が子ながらとても誇らしく、頼もしく思います。

 先日も南山中学校女子部の合格説明会で一緒になった友人ともお話ししたところ、二人の共通点は、結局塾の先生に言われたこと、宿題や課題、テストの解き直し、過去問、授業で指摘を受けたことをただ素直に、実直にコツコツやってきただけだよねという結論でした。改めて、名進研の先生方の熱心な声かけや手厚いご指導に心より感謝いたします。本当にお世話になり、ありがとうございました。

 娘は毎日学校を終えると30分程度で学校の宿題や翌日の準備を終わらせ、それから地下鉄に乗り塾に向かい、練成教室の授業を受け、持参したお弁当を食べてほぼ毎日21時まで自習室で残って宿題課題をこなし、帰宅後も入浴や軽い食事を済ませると、およそ23時30分まで(我が家ではそれ以上は睡眠時間を確保するために必ず就寝というルールを決めていました)勉強、という世間の小学生では考えられないような生活リズムを心折れることなくただ本当にコツコツと続けていました。

 受験が終わって最近ノートやプリントを整理すると軽く胸のあたりまで積み上がり、これにテキストやサーパス、資料集も合わせると身長を超えるほど。よく頑張ってきた証だねと記念撮影をしました。続けてきた努力は彼女の実となり、自信となり、結果に結びついていくんだなと改めて実感しました。

 実は娘が長い受験生活の中で涙を見せたのは二回です。一回は南山中学校女子部から合格通知を受け取った瞬間と、もう一回は五年生の夏期講習の総仕上げテストの夜でした。夏休みの間毎日楽しく塾に通い、順調に講習をこなし、仕上げで受けたテスト。
 本人もそれなりに自信はあったのに、結果はボロボロ。今まで一度も取ったことのないような自己採点に泣いて落ち込んでいました。ひとりメソメソ泣いている姿にいったい何があったのかよく聞いてみると、算数で円周率を使った少し複雑な計算問題。おかしいと見直したものの何かひっかかってその一問にこだわってしまったそう。何度も繰り返し見直しをしてあっという間に時間が過ぎ、ふと時計を見たら残り十分。解答用紙はまだ真っ白で半分以上が空欄ばかり。どうしよう、どうしよう、自分は何をしてしまったのだろうと目の前が真っ白になっていわゆるパニックのような状況に陥ったそうです。それでも何とか目の前の問題を解き続けましたが、案の定算数は過去最低の出来。精神的ショックはとても大きくて、その後の他の教科のテスト中にもあのたった一問が後を引いて、ずっと頭から離れなかったと。
 その話を聞いて、「なんだそんなことか。だったら泣かなくてもいいよ。本当によかったね。ラッキーな経験をしたね」と声をかけました。「どうしてそんなに笑っていられるの?」と泣きながら怒る娘を横目に「これが南山中学校女子部の本番だったら大変だったよ? 模試でよかったよ。」「五年生の夏休みでしょ?たとえクラスが落ちたってまだまだ全然これから挽回もできる時間もあるし、これがまた六年生の冬休み本番直前だったりしたらもっと不安になったり、気持ちを切り替えるのに結構大変だっただろうと思うけど、いい時期にパニックになったね。」と開き直る母の姿に最後は呆れて、「そうか、まぁいいか」とむしろ前向きに気持ちを切り替え、同じ失敗を繰り返さないようにだけ声かけをしていきました。

 名進研の成績順のクラス割や席次表は子供にとってはやはり大きな問題のようで、この模試でJSからJAに落ちたことは、逆に彼女にとってのよい刺激となり、何が何でも上のクラスに戻るという強い気持ちを持ち、その後成績が上がっていく大きな原動力になったと思います。ちょうどその頃から我が家ではテストゼミやプレ中学入試など塾のテストで百点を取ったら、わかりやすいご褒美を用意しました。それは時にハーゲンダッツアイスクリーム食べ放題だったり、観たい映画のチケットだったり。トップレベル講座EXで算数の百点を連続で取った時は、大宴会を開きました。

 また六年生の二学期にも俊秀からTN1に落ちてしまった時は、本人の中では何が何でももう一度俊秀に上がって本番を迎えたいとさらに集中力をあげることができ、そして白星を二つ取り俊秀に返り咲きしたことが、結果的にはむしろ自信を持ついい機会になり、よかったと思います。まさにピンチはチャンスです。
 私は模試の成績やテストゼミの順位が落ちたことを責めたり怒ったり、一緒になって動揺したりした記憶はほとんどありません。
 本人が一生懸命頑張っているのも、一番近くで見ているからこそ、そこでこれ以上頑張れとは言いませんでした。そのかわり、うまくいった時や予想以上の点数が取れた時などは、思いっきり一緒に喜び、よかったね、よく頑張ったねとわかりやすく褒め続けることだけは心がけてきたように思います。

 また我が家では受験生活中も完全に勉強だけという生活は送っていませんでした。小学生が勉強のためだけにそんなに長い時間ピリピリしたモチベーションを保つなんて無理だと割り切った方が家族も楽でした。テストゼミとトップレベル講座EXが終わって帰宅した日曜の夕方は、気分転換の時間。友人とナイターでテニスを楽しんだり、おいしいものを食べに行ったり、メリハリをつけてオンとオフの区切りをはっきりつけていました。その分時間が足りないと娘は怒っていたこともありましたが、ダラダラやっても仕方ない、わからないところは放置はしないが、先生やチューターに質問して理解するようにして、二時間もやっておわらない宿題ならもうやらなくていいとさえ割り切って、時間密度を濃くしていくように声かけをしました。

 ただ六年生十一月に入ってからの直前だけは「ここからは全開でギアを上げていこう」とわかりやすいプレッシャーをかけました。
 本人の意識も変わったのか今までダラダラ見ていたテレビ録画なども自主的にやめて、家の中の雰囲気も表情も変わっていきました。プレ中学入試や志望校別プレ入試が毎週のように連続していた時だったので、テストを受けて、すぐにその解き直しとその頃が一番しんどかったと本人は言っていました。

 娘は六年間多少のことでは絶対に学校を休みたがらず皆勤賞でした。しかし、一月になり隣のクラスはインフルエンザで学級閉鎖、受験直前は学校を休むかどうかも悩みました。ここまで来たら後は自分で好きなように決めていいと言うと、自分で休むと決め、その代わりに南山中学校女子部の入試直前一週間は毎朝本番と同じ時間にタイマーをセットして、過去問五年間分と南山中女子部プレ入試のやり直しを本番同様にやっていました。少しでも不安に思うところを確実に自信に変えていけるように苦手な箇所、間違えたところを再度見直して確実に一問でも得点力を上げていくようにとテキストを見直していました。試験当日はいつものテストを受けているようで、まったく緊張はしなかったと笑っていました。

 余談ですが、冬期講習、正月特訓教室、受験当日の朝、娘の好きな『嵐』の「サクラ咲ケ」が我が家のテーマソングでした。主人に駅まで車で送ってもらう際、一緒に大きな声で歌いながら「ここまできたらお祭りみたいなものだと思って楽しんでいらっしゃい」「あなたができない問題は他の子もできないと思えばいい。やるだけのことはやったんだから、後は自分を信じていつも通りやるだけでいい」と笑って、自信とテンションをMAXにあげて送り出しました。
 合格発表の夜、何年かぶりにカラオケに行き一緒に歌いながら泣きました。

 みなさんのサクラがたくさん咲きますように。