名進研入会は小学三年生。三年生のスタートとはいえ実際二年生の二月。毎週国語、算数の授業と速読・速解力講座を受け、そのまま自習室で宿題をする。テキストの他、問題集からもしっかり宿題が出て、一週間はあっという間。まだ、素直なこの時期。反抗することもなく、先生の言われたことをよく守り、学習習慣ができた。ガチガチに緊張しながら受けたテストも、回を重ねるごとに慣れてきた。早く始めてよかったな、と思った。

 四年生になるといきなり週三回に増えたが、これまた慣れるのに時間はかからなかった。ただ、疲労より相当な空腹と戦っていたようだった。大変なこともあったがこの形の受講、娘にとって効果的だったと後になって痛感した。ちなみに、授業後は短い時間でも自習室へ行くことを習慣にした。

 五年生は通塾が週三回にテストゼミ、トップレベル講座EX。正直、親としてはこの五年生のペースが一番大変だった。連日の授業、直後の土曜日にゼミ。
 ゼミの結果に感情的にならないよう、と幾度も言われたが、点数は出る、順位は出る、クラスも変わる、お星さまもつく。一喜一憂するなと言われてもそれは無理。それじゃ、できるだけ「憂」にならないよう、「喜」でいられるようにするには?
 保護者会で言われた、「塾のない日を効果的に使う」ということ。漢字や、理科・社会の用語のマーキング。これをするだけでもかなり余裕が出たようだ。
 トップレベル講座EXは、多少なりとも余裕のある五年生で受講できてよかったと思う。この時期から、算数が好き、と言うようになった。
 この年、娘は第一志望校を変えた。姉が楽しそうに通っている学校もいいけれど、違う学校も見てみようか、と、夫と娘で行った学校説明会。帰宅した夫が、ぜひ行かせたい‼と絶賛した南山中学校女子部。難しそう…超優秀な女の子が行くんだよね。でも、目指してみるか‼
 夏に肺炎で入院。夏期講習前半は、まるまる欠席。以降、健康第一を心がけつつ、JS1、TN1をキープして、長かった五年生、無事終了。

 六年生は通塾が週四回にテストゼミ。トップレベル講座EXは資格を得、散々迷ったが、受講しなかった。平日3日間と土曜日は午後から四教科、日曜日にゼミ。五年生のペースが過酷すぎて、六年生の一週間が少し緩く感じた。
 名進研に通い始めて四年目に入っていた。ペースは作れている。宿題もためていない。成績も何とか保っている。クラスはJS1と俊秀。
 小学六年の女子は思春期に片足突っ込んでいる状態。態度に出なくても、心は始まっているであろう反抗期。あれこれ親が言うより、塾と本人に任せてこのまま順調に受験まで突っ走ろう、と決めた。そのかわり、私も自らの目標を持ち、娘に負けないよう、目標達成を誓った。
 長い夏休みも病気なしで乗り切れた。娘が頑張っていると思えば、お弁当作りも苦にならない。

 後期は日曜日の午後に志望校別の講座を加えた。過去問演習が始まり、プレ中学入試には合格判定が出る。焦る‼前期で学習を終えているのに、過去問でこの点数?合格者平均点に届かない?志望校別プレ入試も始まり、毎週のようにあちこちの会場に出向いて受験。気にしすぎないように言われてもやっぱり気になる合格判定。第一志望校の合格率80%以上には手が届かない。解答用紙を見たら、すごい凡ミス。しょうもない計算間違い。娘と顔を見合わせながら苦笑いするが、心の中は焦りでいっぱい。俊秀カードも手放していた。
 正月特訓教室は本人の意思で行かなかった。でも、正月特訓組に負けないくらい、家で頑張ろう、と約束した。
 三学期、インフルエンザが蔓延するまで学校は休まずに行った。第一志望校の直前だけは続けて欠席させてもらい、過去問やプレ中学入試を解き直した。

 早稲田佐賀中学校(名古屋会場)、金城学院中学校、南山中学校女子部、愛知淑徳中学校。出願した四校、元気に受験できたことに対しては花丸‼
 合格通知は三通。届かなかった第一志望。
 涙を一筋だけ見せて、あとは前を向いていた娘に、慰めの言葉は似合わないから掛けなかった。
 名進研でお世話になった四年間を振り返りつつ、私はたくさん後悔した。やはり六年生もトップレベル講座EXを受講させればよかったな。正月特訓教室に行った方がよかったかな。第一志望変えなければ、不合格の経験させずに済んだかな。もっとできることがあったはず。六年生で緩い、と思ったのが間違いだった。あの時すでに何かが足りなかった。
 ある歌の歌詞が、後悔の数々を払拭してくれた。
 「叶う夢も 叶わぬ夢も かけがえのないものだよ」
 娘は四年間かけて、大きな紙に「夢」という字を書いてきた。一画一画黙々と。筆が重い日も、思うように手が動かない日もあったと思う。そして、ちょっと紙が大きすぎたのかもしれない。でも最後まで書き切った「夢」に対して、後悔なんていらない。
 高くて大きな目標をめざして歩んだ足跡。届かなかったことで分かった『さらなる高み』。
 ありがとう。かけがえのないものを見ることができたよ。