次男が中学受験をしたいと言い出したのはいつの頃だったろう。その動機の裏に上二人、兄と姉の影響があったことは間違いない。公立中学、公立高校と進んだ二人が「受験」という言葉を口癖のように家庭内で繰り返す中、歳の離れた次男が背伸びして、自分も受験をしたい、自然とそのライバル意識に火がついたと想像される。そんな我が家において、長男が一浪したことで、長女が高校三年、上二人が大学受験で次男が中学受験、子供三人全て受験生という、考えただけで背筋が寒くなるほど過酷な状況に陥ってしまった。不安ともどかしさに押しつぶされそうな受験生の親を、どうにか勤め終えることができたのは、夫婦の協力あってのことと強く思う。

まず上の二人は放っておくことに決めた。中学受験には親の助けが必要ということで次男は家内がサポートした。しかしその過酷さは予想を越えていて、名進研のテキストの問題を一生懸命教えようとする家内の思いに子供が答えられない。一旦機嫌が悪くなると、気持ちを修正できずに時間を浪費してしまう。六年生の夏休み以降目立つようになり、それが度重なって名進研のテストの成績が落ちてしまった。結果に愕然とし、仕事の忙しさにかまけていた自分を反省して、できるだけ次男の受験勉強にかかわることを決めた。関わってみると我が子ながらそのすごさに驚く。小学生がよくぞここまでと、舌を巻くほど名進研の高度な問題を父親より速くかつ正確に解く。名進研のテキストで一緒に勉強しながら我が子の成長に感動する。反面、遊び盛りの年頃に受験という辛さに耐えかねて臍を曲げることもしばしば。その息子に、怒ってはいけないと思いつつ抑えきれずに何度か爆発した。それでも諦めない。名進研の保護者会で耳にした、名進研の先生方の「最後まで諦めない」という言葉が幾度となく心に浮かぶ。「我が子や家内の苦労を無にしてたまるか」という気持ちが沸々と湧く。仕事から帰って着替えももどかしく発破をかけて一緒に名進研のテキストを勉強する。

子供三人全員受験というのは大変なだけではなく、いいこともある。まずは受験生だからという理由で特別扱いする必要がないことだ。甘えてはいられない、お互い牽制しあって、自分のことは自分でするという自立の意識が育つ。結果として思ったほどピリピリすることなく一日一日が暮れていった。受験一色の生活の中、名進研で学ぶことも多く、親も一緒に成長できた。名進研の保護者会へはできるだけ参加した。名進研の先生の話もさることながら、中学校の先生の話もためになった。長男の通う予備校の説明会と比較するのも楽しかった。

本番を間近に控えた昨年末、突然私の父が末期癌で入院した。進行が早く、子供たちの受験が終わるまでは、という願いも虚しく、明けて一月半ばに他界。ごたごたの中、焦る気持ちがあったろうに、文句一つ言わずに粛粛と葬儀に参列してくれた子供たちに感謝したい。また三人全員が第一志望校に合格できたのは、最後まで孫の受験を心配してくれていた父の加護があってのことと思う。名進研をはじめとする、関係したすべての人に心より感謝の意を表したい。