愛知県 中高一貫校適性検査 傾向(2025年)
算数
求められる3つの力 ~読解・分析・問題解決~
適性検査における算数では、小学校の学習内容を基盤としつつも、問題文が長く、複数の条件を的確に読み解くことが求められる問題が出題されました。このような問題では、与えられた条件や情報の中から必要な情報を適切に選び取る力(読解力)と、それを論理的に整理する力(分析力)と、適切な手法を用いて解決策を導き出す力(問題解決力)が重要となります。また、適性検査では、限られた時間の中でこれらの力を発揮することが求められるため、効率的な作業力も試されているといえるでしょう。
適性検査Ⅰ
3(2) 次の【資料2】は、リレー大会のルールを説明したものです。しおりさんたちは、このルールに従って、リレー大会に向けて目標タイムを決めることにしました。
① しおりさんたちは、目標タイムを決めるために、走る順番を決めました。次の【会話1】はそのときの会話です。また、【表1】は、6人の50m走のタイムとスタートダッシュについてまとめたものです。【資料2】、【会話1】、【表1】を参考にして、第5走者に当てはまる人を、あとのアからカまでの中から一人選びなさい。
ア しおりさん
イ ゆうとさん
ウ そうまさん
エ なつみさん
オ かりんさん
カ てつやさん
ポイント
複数の情報(資料・会話・表)が与えられているため、「何が求められているのか」「どの情報を使うべきか」を的確に見極める必要があります。また、読み取った情報を表などに整理し直すことができると、効率よく解答までたどり着くことができます。
適性検査Ⅱ
3マイクさんは、次の【資料】にあるゲームをしました。【資料】を読んで、あとの問いに答えなさい。
(2) マイクさんは、次のゲームに進みました。新しく現れたマップを見て、次の【表2】のプログラムをつくると、成功しました。このマップには、×印が書かれていませんでした。このマップの縦と横のマス数の組み合わせを、あとのアからカまでの中から一つ選びなさい。
ア 縦:4マス 横:5マス
イ 縦:5マス 横:4マス
ウ 縦:5マス 横:5マス
エ 縦:5マス 横:6マス
オ 縦:6マス 横:5マス
カ 縦:6マス 横:6マス
(3) マイクさんは、さらにゲームを進めました。そこで現れたマップを見て、次の【表3】のプログラムをつくると、成功しました。このマップは、縦4マス、横11マスで、×印が書かれたマスがいくつかありました。このマップの×印が書かれたマスの数を、あとのアからカまでの中から一つ選びなさい。
ア 4
イ 5
ウ 6
エ 7
オ 8
カ 9
ポイント
適性検査Ⅱでは、プログラミングに関する問題が出題されました。まずは、与えられた資料をもとに、ルールを把握する必要があります。(2)は、そのルールに沿って作業を進めていくと解答にたどり着くことができます。(3)は、そこまでに見つけた効率のよい調べ方を使って解いていく“応用力”が問われる問題になっています。直接コードを書く必要はありませんが、プログラミング的思考(ルールや手順に基づいて解決策を論理的に組み立てる力)が必要です。
模範解答
適性検査Ⅰ 3(2)① カ
適性検査Ⅱ 3(2)オ (3)ウ
国語
文章の内容と構造の理解+前後関係の理解
適性検査における国語分野では、文章(資料)にある空欄の中に入れるのにふさわしい「接続語」「文」を選択する問題、複数のテキスト(資料)の「要点」や「表現」についての理解を問う問題、複数の文を適切な順番に並べ替える問題が出題されました。漢字やことわざなどの知識を直接問う問題や物語文の読解問題はありませんでした。
その場で与えられる情報を読み、内容を正確に理解するだけでなく、文と文の関係性や文章全体の構造まで理解する力が必要です。難問や奇問はありませんので、日ごろから正確に文章を読み取る基本的な読解力と語彙力をつけていくことが重要です。また複数のテキスト(資料)の共通点や差異について読み取る練習も大切です。
全体として、受検者は45分という制限時間のなかで、検査Ⅰ・Ⅱのそれぞれで、18ページにわたる約10000字の文字数の問題の内容を速く・正確に読み取らなければなりません。国語分野以外でも読解力が求められます。
適性検査Ⅰ
1(4) たかしさんは、年中行事について書かれた次の【文章2】を読み、内容を整理するために、次のページの【まとめ】を作りました。たかしさんが書いた【まとめ】についての説明として適当でないものを、あとのアからエまでの中から一つ選びなさい。
ア 筆者が示した問いに対する答えの内容を中心に、この文章で伝えようとしている筆者の考えがはっきりとわかるようにまとめている。
イ 年中行事が行われるようになった背景や、祖先が年中行事にこめた思いについては、具体的な例を省略して簡潔にまとめている。
ウ はなれたところにある文と文をつなぎ合わせたり、指し示す言葉やつなぐ言葉を適切に使ったりすることで、短くても要点をとらえた文章になっている。
エ 全ての段落から、筆者の考えが述べられている文をそれぞれぬき出すことで、この文章で筆者の伝えたいことが明確になっている。
ポイント
まず資料【文章2】の文章構造(話題・主張・具体例)を把握する必要があります。そのうえで、【まとめ】として書かれた文章について、「どのように資料をまとめたのか」や「まとめ方の意図」の理解力が問われています。
適性検査Ⅱ
1(2) アサリへの関心が高まったのぞみさんは、家族と一緒に「アサリの酒蒸し」を作ることにしました。次の【のぞみさんがまとめた「アサリの酒蒸し」の作り方】の には、作る手順が入ります。下の①から⑦までの文を正しい順番に並べかえて作る手順を完成させ、2番目と6番目に当てはまる文の番号の組み合わせとして最も適当なものを、あとのアからカまでの中から一つ選びなさい。
① 熱したフライパンにサラダ油、細かくきざんだにんにく、しょうがを入れて、香りが立つまでいためる。
② 皿にアサリを盛り付け、青ねぎを散らす。
③ アサリに砂をはき出させ終わったら、アサリのからをこすり合わせるように、流水できれいに洗う。
④ アサリの口が開いたら、しょうゆを加え、全体がなじむように混ぜる。
⑤ ボウルに海水と同じこさの食塩水とアサリを入れ、アルミホイルでふたをする。
⑥ 香りが立ってきたらアサリと酒を入れてふたをし、アサリの口が開くまで蒸し焼きにする。
⑦ ボウルを冷暗所に数時間置き、アサリに砂をはき出させる。
ア 2番目:③ 6番目:②
イ 2番目:⑤ 6番目:②
ウ 2番目:⑦ 6番目:⑥
エ 2番目:③ 6番目:⑥
オ 2番目:⑤ 6番目:④
カ 2番目:⑦ 6番目:④
ポイント
適性検査Ⅱでは、料理の調理手順を並び替える問題が出題されました。一見すると家庭科の知識を問う問題に見えますが、文と文の関係を読み取る国語の問題です。文の中で用いられた言葉から、前後に来るべき内容を考える必要があります。特に「因果関係」の文脈をとらえる力や、選択肢の要点や複数の選択肢に共通する話題を見抜く「読解力」が必要とされる問題です。もちろん日常生活の体験的知識があればより速く解けるでしょう。
模範解答
適性検査Ⅰ 1(4)エ
適性検査Ⅱ 1(2)カ
理科
正確な知識と条件整理
適性検査では、会話文や実験から内容や条件を理解し、小学校で身につけた理科の知識と組み合わせて考える問題が出されました。適性検査Ⅰでは「電池のはたらき(小4)」「電磁石(小5)」「メダカ(小5)」、適性検査Ⅱでは「ものの燃え方(小6)」「人体(小6)」の単元から問題が出され、思考力のみならず、幅広い知識が必要となりました。また、問題のリード文が長く、4ページ前の実験内容から考える問題も出されました。どの数値が必要なのか、何と比較しているのかなど、条件を読み取る力と、情報を整理する力も求められます。
適性検査Ⅰ
2(2) メダカを飼育してしばらくすると、めすが卵を産み、その後、子メダカが誕生しました。ひろきさんとはるなさんは観察してわかったことをそれぞれまとめました。次の【ひろきさんのまとめ】と【はるなさんのまとめ】の( ① )から( ④ )までに当てはまる語句の組み合わせとして最も適当なものを、あとの表のアからクまでの中から一つ選びなさい。
| ① | ② | ③ | ④ | |
| ア | おす | めす | 心臓 | 産卵 |
| イ | おす | めす | 心臓 | 受精 |
| ウ | おす | めす | 肺 | 産卵 |
| エ | おす | めす | 肺 | 受精 |
| オ | めす | おす | 心臓 | 産卵 |
| カ | めす | おす | 心臓 | 受精 |
| キ | めす | おす | 肺 | 産卵 |
| ク | めす | おす | 肺 | 受精 |
ポイント
メダカのおすとめすの見分け方やメダカの卵の中の変化の様子は教科書に記載がある内容です。産卵や受精なども基本的な語句であるため、教科書にある知識を正確に身につけておく必要があります。思考力が問われる問題の学習だけでなく、知識事項の整理も並行して進めていきましょう。
適性検査Ⅱ
2(4) 【実験】を終えて、はるなさんとたかしさんは、〈手順〉の4でふたをずらしたときに、酸素がびんから出ていかないことが不思議でした。先生に質問すると、酸素の重さが関係していると教えてくれました。そこで、はるなさんとたかしさんは、酸素の重さを求めて、酸素がびんから出ていかないことを確かめることにしました。次の①と②の問いに答えなさい。
【実験】
〈手順〉
1 水槽の中に三つのびん(700mL)をしずめ、空気をぬく。
2 水槽の中でびんを逆さにして、ちっ素ボンベ、酸素ボンベを使って、ちっ素、酸素を、びんX、びんY、びんZに次の割合で入れる。ただし、びんの中に100mL は水が残るようにする。
[三つのびんのちっ素と酸素の体積の割合]
びんX ちっ素:酸素=1:1
びんY ちっ素:酸素=4:1
びんZ ちっ素:酸素=5:1
① 三つのびんX、Y、Zに入れた酸素は、合わせて何mLですか。次のアからオまでの中から一つ選びなさい。
ア 180mL
イ 520mL
ウ 600mL
エ 870mL
オ 1280mL
② 【実験】で用いた酸素ボンベの重さを実験前と実験後に測ったところ、次の【表2】のようになりました。下の【確かめたこと】の( A )と( B )に当てはまる数と言葉として最も適当なものを、あとの選択肢の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。ただし、( A )に当てはまる数は、小数第2位を四捨五入して、小数第1位まで求めることとします
【表2】酸素ボンベの重さ
| 実験前(三つのびんX、Y、Zに酸素を入れる前) | 246.04g |
|---|---|
| 実験後(三つのびんX、Y、Zに酸素を入れた後) | 245.39g |
【確かめたこと】
空気1Lの重さは1.2gです。また、三つのびんX、Y、Zに入れた酸素の量と実験前後の酸素ボンベの重さの差から、酸素1Lの重さは( A )gであると考えることができます。よって、同じ量の空気と酸素の重さを比べると、( B )ので、酸素がびんから出ていかないことがわかります。
〈Aの選択肢〉
ア 0.5 イ 0.7 ウ 1.1 エ 1.3 オ 1.4 カ 3.6
〈Bの選択肢〉
ア 酸素の方が重い イ 酸素の方が軽い
ポイント
与えられた数値と実験の条件をもとに考えていく問題です。びんの容量やびんの中に水を残しておく条件など、読み飛ばしがちな部分にどれだけ着目できるかが重要です。また、小数の計算なども含めて、限られた時間の中で早く正確に解く計算力も必要です。
模範解答
適性検査Ⅰ 2(2)カ
適性検査Ⅱ 2(4)①イ ②A:エ B:ア
社会
正確な知識+資料を読み取る力
愛知県立附属中学校1次選抜の適性検査では、社会の知識や資料読み取りの技能を問う問題が出題されました。適性検査Ⅰは、小学校で学習した歴史や公民の基礎知識を問う内容であるため、社会の教科書に記載されている知識を正確に身につけることが重要となります。一方、適性検査Ⅱは、表やグラフなどの複数の資料を読み取って解答する形式の問題であるため、資料の数値を正確に読み取る力に加えて、思考力や計算力も要求されます。このような問題は差がつくポイントになる可能性があるため、注意が必要です。
適性検査Ⅰ
1たかしさんは、年中行事について学習しました。あとの問いに答えなさい。
(1)年中行事がさかんに行われるようになった平安時代と関わりの深い文として適当なものを、次のアからキまでの中から二つ選びなさい。ただし、マークらんは1行につき一つだけぬりつぶします。
ア 食べ物をにたり、たくわえたりするために縄目の模様のついた土器を使用していた。
イ 仏教や儒教が伝わる前の日本人の考え方を研究しようとする国学が広がった。
ウ 書院造の広まりとともに、ふすまやかけじくに水墨画がえがかれるようになった。
エ 十二単を着た女性など当時のくらしや風景などをえがく大和絵の技法が生まれた。
オ 東海道の名所や歌舞伎役者を題材に、浮世絵がえがかれるようになった。
カ 茶を飲む習慣が広まり、茶を飲むための茶室もつくられるようになった。
キ 漢字をくずしてひらがながつくられ、漢字の一部を省略してかたかながつくられた。
(2)たかしさんは、現在まで受けつがれている年中行事のうち、身近なものを次の【表】にまとめました。【表】の( ② )と( ③ )に当てはまる行事を、あとのアからエまでの中からそれぞれ一つずつ選びなさい。ただし、アからエまでの行事を全て1度ずつ用いて、( ① )から( ④ )までに当てはめることとします。
【表2】たかしさんがまとめた「年中行事カレンダー」
| 年中行事カレンダー | |||
|---|---|---|---|
| 1月 | 正月、七草がゆ | 7月 | ( ③ )、新盆 |
| 2月 | ( ① ) | 8月 | 旧盆 |
| 3月 | ( ② ) | 9月 | 重陽の節句、( ④ ) |
| 4月 | 花見 | 11月 | 七五三 |
| 5月 | 端午の節句 | 12月 | 大みそか |
ア 七夕 イ 月見 ウ 桃の節句 エ 節分
ポイント
(1)はそれぞれの選択肢が何時代の出来事について述べているのかを判断する必要があります。歴史では、キーワードから時代を特定する能力が求められます。歴史を学習する際には、常に時代を意識することが重要です。(2)の年中行事カレンダーは教科書に載っています。教科書の隅々まで読み、正確な知識を身につけることを心がけましょう。
適性検査Ⅱ
2(5) はるなさんとたかしさんは、空気中の二酸化炭素の増加が地球温暖化の原因の一つと考えられていることを学びました。次の【資料3】から【資料6】までは、そのときに、はるなさんとたかしさんが調べたものです。資料から読み取れる内容として最も適当なものを、あとのアからエまでの中から一つ選びなさい。
ポイント
適性検査Ⅱでは、複数の資料を読み取り、資料から読み取れる内容として適切な選択肢を選ぶ問題が出題されました。上記のような問題は、知識だけでは解くことができません。資料に記載されている情報を頭の中で整理して正しく読み取る読解力や、選択肢の正誤が正しいかどうか丁寧に吟味する思考力・判断力に加えて、正確な計算力も必要となります。
模範解答
適性検査Ⅰ 1(1)エ・キ (2)②:ウ ③:ア
適性検査Ⅱ 2(5)イ
総評
適性検査ⅠとⅡは単純に1つ目、2つ目の試験であることを意味するだけで、ⅠとⅡで教科を分けることはないという事前説明の通りの適性検査でした。
問題構成
適性検査ⅠとⅡで大きな違いはないものの、細かく見ていくと、以下の3点は違いとして挙げられます。
・Ⅰは主に会話文の読み取り、Ⅱは資料、グラフや表の読み取りの問題や条件を整理して手を動かして地道に解いていく問題が多く出題。
・Ⅰは教科書内容や知識寄りの問題が多く、Ⅱは思考力、判断力、表現力寄りの問題が多く出題。
・Ⅱの方が時間もかかり、難易度も高かった。
また適性検査Ⅰ・Ⅱどちらも設問数15問で18ページでした。
設問数よりもページ数の方が多く、問題にたどりつくまでに時間がかかる問題でした。
配点は1点~3点までまちまちで、2点問題、3点問題は部分点があるものもありました。
4教科バランスよく出題されていますが、その中で算数が多めでした。
国語の問題数が少ないように見えますが、全体の文章読み取りに含んでいるからであり、決して国語を軽視しているわけではないと考えるべきです。
また一見、音楽や家庭科に見える問題もありましたが、実際のところは算数や国語の問題でした。
文字数
適性検査Ⅰ(45分)が9,798字、適性検査Ⅱ(45分)が9,855字と、全国でもトップレベルでした。
読解力とデータの活用がポイントとなり、時間配分がカギとなる試験となりました。


















